その場で連れて帰ろうかとも思いましたが、犬を引き取るということは、その子の一生を、必ずしあわせなものにしてあげる責任を負うということ。本当に、自分にそれだけの覚悟があるのか。また、新しい子を迎えることが、チャッピーにとって良いことなのかどうか。衝動的な感情にまかせて、簡単に決めていいことではない。一晩、頭を冷やして考えようと思ったのです。
その日は思いとどまり、そのまま家に帰ったものの、無邪気にはしゃぐ幼い子犬たちに混じり、ショウケースのなかでひとりぽつんと、寂しそうな目をしていたあの子のことが、どうしても頭から離れませんでした。
いろいろと考えた末、やはりあの子を放っておけないという思いが強く、新しい家族として迎えることを決意しました。やっと準備万端整えて、迎えに行くことができたのが、お店が正月休みに入る直前の大晦日の夜だったのです。
その子には、家族にとって良い初夢をもたらしてくれるようにと、「夢」と名づけました。
幸い、夢はとても懐っこい子で、仔犬とどう接していいか分からない様子だったチャッピーにも上手に受け入れられるようになりました。
迎えたばかりの頃は、ペットショップから譲り受けたフードを使っていましたが、私はなるべく早く「スパミール」に切り替えるつもりでした。食の細かったチャッピーが、ビッグウッドにお世話になってから、とてもよく食べるようになり、悩んでいた皮膚のトラブルからも解放されたため、夢のことも、「スパミール」で、元気な身体にしてやろう!と思ったのです。
しかし、食事に関しては、今まで経験したことのない悩みを抱えることになりました。
「食べてくれない」ことが心配だったチャッピーと違って、夢は異常なほど「食べたがる」子だったのです。食事を出せばガツガツと一気に食べ、物足りなさそうに部屋中をウロウロとかぎまわり、部屋の隅のほこりさえ食べようとします。常に飢えているようなその姿は、見ていて悲しくなるほどでした。かといって、食事の量を増やすと、たとえ小分けにして回数を増やして与えても、すぐに軟便になるのです。
「スパミール」に切り替えても、それは一向に変わりませんでした。
そして、その割には、食べても食べても、一向に体重が増えず、小さな身体に見合わないほど多量のウンチをしているところが気にかかりました。
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