*このエッセイは、ビッグウッド代表 大木 政春によるものです。
 「ビッグウッドのフードに対する想いやこだわり」をみなさんにお伝えできたら幸いです。




ドッグフード奮闘記
Vol.12 「とにかくやってみよう!」


機械作りといっても、私はその様な仕事についたこともなく、経験も無ければ知識もありません。
ましてや、私が作ろうとしているのは、世の中に1台も存在しない未知の機械。
お手本にするものや、マニュアルや、設計図も何もない、『何もない無の状態』だったことが、逆に頭を整理しやすくしてくれました。
まずは、五目御飯が流通しない理由。
世の中に存在するレトルト機械でなぜ作れないのかを調べることが何かしらのヒントになるのではないかと考えました。

レトルト機械で作れない理由を調べた結果、水分率が75%でないと作れないのに対し、私が作ろうとした五目御飯の水分率が55%であったため、「熱が通りにくく無菌に出来ない」ということがわかりました。
無菌状態にするためには、相当な熱(摂氏165度)を何時間にもわたってかけなければならないそうです。
そして何時間にもわたって熱をかけると、食品の持つ栄養成分を著しく壊し、米自体も密封状態でそんなに熱をかけてしまうと餅状にどろどろになってしまい五目御飯で無くなってしまうということでした。
「そうか!低温(栄養成分が壊れず、米が餅状にならない温度)設定で限りなく無菌に近い状況にできる機械を作ればいいんだ!」

頭ではわかったのですが、机の上でいくら考えてもここから先に進むことができません。
まずは行動あるのみ!
『案ずるより生むが易し』という言葉もあるし、レトルト機械を真似て自分で作ってみることにしました。
しかし、レトルト機械と一口でいっても、買えば何千万円もする高価な機械であり、部品等も売っていません。世界で一台しかない車を手作りで作るようなものです。
以前見学させてもらったレトルト食品メーカーの工場を再度訪れ、レトルト機械をこの目で見、手で触らせてもらいました。
メインは大きな鉄のタンクで、たくさんの電子制御やパイプが周りに張り巡らされています。
しかし仕組みについては、見ただけではまったく訳がわかりません。
その足で図書館に直行し機械の仕組みを調べてみました。
そして、この機械が『タンクの中に蒸気を入れ、冷却水でタンク内を冷やすだけの単純な設備なのだ』ということがわかりました。

「なんだ!簡単な機械じゃないか?でも、なぜこんなに単純な物がそんな高価なんだろう・・・?」
なにかしら複雑な部分も含まれているのだろうか?・・・気になることはいろいろありましたが、あまり気にしないことにしました。
「気にしない!気にしていては何も始まらない!やると決めたのだからやれる範囲のことしか見ない、聞かない、考えない!自分にはどんな事があっても必ず出来るのだ!」
自分の第六感を信じ、『自分にはできる』と自己暗示を繰り返し、まずはそのメインであるタンク探しから始めました。

『機械を作ろう』と考えてから、モチベーションだけはアトムへの熱い想いを毎日毎日振り返り、下がることはありませんでした。
今振り返ってもその時期の私は何かにとりつかれているのか、それとも神がかりなのか何だかわからない状態だったと思います。


Vol.13につづく)