今月のエッセイ&イラスト

Vol.30「一匹狼の犬」
文・堀 直子(児童文学作家)/写真・藤城 薫

 

飼い主と飼い犬は、似るのだろうか?

私は、子どもの頃から、1人でいるのが好きだった。
グループでの活動や、協力してなにかを仕上げるというのが、にがてでたまらなかっ た。
みんなの輪からはみだして、なにか1人で空想しているのが、性にあっているのである。
それは、おとなになってからも、まったく変わらず、年々激しくなるようだ。

私の飼い犬ライオンが、なんだか、私の性格を受け継いでしまっているなと気がつい たのは、公園に散歩にいくときである。
丘の上の公園は、犬の散歩をする人たちで、いつもにぎわっている。
たいていが、顔見知りだから、当然犬たちも顔見知り。犬たちは、楽しそうに群れて、 軽く鳴きあい、しっぽをふり、ひとかたまりとなって遊ぶのだ。

私は、幾度どなく、ライオンにいってあげた。「みんなと一緒に遊びなさい。おもし ろいよ」
ところが、ライオンときたら、「ううん、ぼくひとりでいいの」とでもいうふうに、
犬たちから、離れたところで、草のにおいをかいだり、足で土をひっかいたりする。
ときどき、よその犬が、「遊ぼう!」とライオンを呼びにくるけど、ライオンは、あっ さりとことわってしまう。しかし、それでいて、ライオンは楽しそうなのである。

草とたわむれ、ひとりで、どこまでも走り、大好きな匂いに出会い、私と触れあい…

私は自分の子どもの頃に、そっくりだなと思いながら、ライオンの頭をたくさんなで てあげる。
ライオンは、くすぐったそうに目を細める。

もうすぐ、ライオン13歳の誕生日がやってくる。

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