今月のエッセイ&イラスト

Vol.24「私にできること」
文・堀 直子(児童文学作家)/写真・藤城 薫

 

長崎にはじめてNGOができ、その呼びかけ人となってから、一週間がたった。
長崎NGOの目的は、「今回のアメリカでのテロで犠牲になった人々への援助と、報復戦争で発生するアフガン難民や、アフガニスタン国内の人々への緊急支援活動を行ったり、アジアを中心とした地域での継続的なサポートをする」ことだ。

そして、福岡を拠点とするNGOペシャワール会を指事し、「アフガン命の募金」を全国へ呼び掛けることだ。

ペシャワール会は、荒廃したアフガンの大地で、井戸を掘り続けている。
1000箇の井戸を掘ることを、唯一の願いとして。

そう5万円もあれば、ひとつの井戸が作れるのだ。そのための募金活動なら、ということで、私もさっそく参加させてもらった。11月の晴れた日曜日、長崎でいちばんのにぎやかなアーケードに、募金箱を胸に抱えながら。

夕暮れのアーケードを行き過ぎる、なん百なん十という人々にむかって、私は、募金お願いの主旨を説明し、「お気持ちだけで、いいのですよ」と募金箱を差し出した。

すこし照れながら、ふうんとうなずきながら、お金をいれてくれるのは、高校生や、中学生。地べたにすわりこんだままの、茶髪にピアスの若者たちも、けっこう募金をしてくれる。

反対に、中年の女性や男性、お年寄りたちは、無関心のまま私の前を通り過ぎるのだ。迷惑そうな顔をして。

ときどき、私は、どうしてだろうと考える。
分別がありそうなおとなよりも、若い子たちが、募金に一生懸命になってくれるなんて。

彼らの気持ちは、私の胸で、募金箱にぽとりぽとりとたまっていく。

「ありがとう」と私は、なんべんもくりかえしながら、募金箱の重さに、感動している。

このお金で、きっといい井戸が、掘れるだろう。
アフガンの岩だらけの大地から、命の水が、滲み出していくだろう。

私は、私のできることから始めようと、この日あらためて思いながら。

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