今月のエッセイ&イラスト

Vol.22「Eメールは、恐ろしい!」
文・堀 直子(児童文学作家)/写真・藤城 薫

 

ホテルのバーで、知り合ったドイツ人の男性と、Eメールアドレスを交換したら、さっそくメッセージが送られて来た。

一日放っておき、次の日、なにげなくパソコンを開いたら、5分間隔で、メールがはいっている。

私は、なめらかな英語で書かれた彼の手紙を見て、あぜんとした。

「naoko、いとしいnaoko、なぜ、ぼくに返事をくれないの?ぼくを、忘れてしまったの?いま、きみは、なにをしているの?ぼくに知らせて?それとも、きみは、ぼくを、おこっているの?」

私は、メールの返事がおそくなったことを、おわびしながら、なんともいえない気持ちで、彼にメールを送ったのだが、それに対する彼のメッセージときたら
「よかった、きみがぼくを、忘れてないでいてくれて。長崎に戻ったら、また、ぼくと、loveな時間を過ごしてね」

メールには、彼の写真が、添付してあって、
「このぼくの写真をみたら、もう、きみは、あしたから、さびしくなんかないよ!」 ってなことが、書かれてあった。

たった一時間話をしただけなのに、こいつは、なにを勘違いしているのか!と私は、開いた口がふさがらなかった。

英語が堪能な年若い友人に、そのことを相談したら、「きちんと断らないとだめだよ」といわれ、私は、「結婚しています」と書いて、ふたたび彼にメッセージを送ったのだが、さて、7時間の時差をこえて、どんな内容のEメールが、返ってくるのやら!

でも、愛の言葉を率直に語れるドイツ人の彼のように、私も、好きな人から、そんなことを一度でもいいから、いわれてみたい。

夫には、別にいわれなくても、いいけどね。

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