今月のエッセイ&イラスト

Vol.2 「チャイルド ウォー」
文・堀 直子(児童文学作家)/写真・藤城 薫

 

私の家の裏に、アパートがある。そこには、四組みの夫婦が住んでいて、それぞれ 三人ずつ子どもがいる。四才から、中一まで。彼らは、一日中、セミとりや、花火、 水遊びに夢中になっている。
ときどき、私の庭に侵入して、犬のライオンを、おもち ゃのてっぽうで打ったり。スナック菓子を散らかしたり、せっかく咲いたランの花を むしったり。そのたんびに、私の雷は爆発する。

夏、せまいアパートの部屋は、窓が全部開け放されて、子どもの机も丸見えだ。あ る日、私は、かわいい小さな本棚に、まんが本といっしょになって、私の書いた童話 「ゆうれいママ」が、並んでいるのを見つけた。うわっ、あの子たち、けっこう、い いやつなんだ。私の本を読んでくれてるなんて。
私は、思わず、彼らに、笑顔で声かけた。が、彼らは、ジロリと無視。そのあと、 マリーゴールドの鉢が、そっくりなくなっているのに気がついて、アパートに行って みたら、「ゆうれいママ」の子の玄関の前に、ちゃんと置かれているじゃないか。
私は、花の鉢を取り返しながら思った。アッタマにきたぞ。もう、いいやつだなん て、思わない。だけど、いったい、いつまで、私と彼らの戦いは、続くのだろうか。 夏を越えて、永遠に?

<ちょっと、ひとこと>

世間では、少子化、少子化なんていわれているけど、私の住んでいる長崎のいなか 町は、三人姉妹どころか、四人兄弟っていう家庭もあって、まったくうそみたい。そ いつらは、朝から晩まで、騒ぎまくり、私は、仕事中だ、うるさい!とどなりまくり 、戦いは、いつになってもおわりそうにありません。あーあ。

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